
はじめに
「血圧がちょっと高めですね」と言われても、特に痛みもないし、体調も悪くない…と、そのままにしていませんか?実は、高血圧は自覚症状がほとんどないまま、体の内側でじわじわと進行していく「静かな病気」です。
しかも、血圧が高い状態が続くと、体の大切な部分――たとえば脳、心臓、腎臓など――に大きな負担がかかっていきます。こうした臓器のダメージは、ある日突然、深刻な病気として表れることもあります。
このコラムでは、高血圧がもたらす臓器への影響をわかりやすくお伝えしながら、今日からできる小さな対策についてもご紹介していきます。
脳への影響―脳卒中や認知機能の低下
高い血圧が続くと、血管の内側が傷つきやすくなります。特に脳の細い血管はもろく、血流の圧力に耐えきれず破れることがあります。これが「脳出血」です。
また、血の流れが途中で止まってしまう「脳梗塞」も高血圧が原因で起こりやすくなります。脳卒中(脳出血や脳梗塞)は、命にかかわるだけでなく、半身マヒや言葉の障害など、日常生活に大きな支障を残すことがあります。
さらに最近では、高血圧が長く続くと、記憶力や集中力が落ちやすくなり、認知症のリスクが高くなることもわかってきています。脳を守るためにも、血圧のコントロールはとても大切です。
心臓への影響―心不全や狭心症のリスク
心臓は、全身に血液を送り出すポンプのような役割を持っています。しかし、血圧が高い状態では、心臓は常に強い力で押し出さなければならず、大きな負担がかかります。
この状態が続くと、心臓の筋肉が分厚くなり(心肥大)、次第にうまく働けなくなっていきます。これが「心不全」や「狭心症」「心筋梗塞」などの原因になります。
初めのうちは症状がなくても、息切れ、胸の痛み、むくみなどが現れたときには、すでに心臓がかなり弱っていることもあります。
腎臓への影響―老廃物の処理ができなくなる危険
腎臓は、体の中の“ごみ”をこし取って、尿として外に出す働きをしています。この働きを支えるのが、腎臓の中にあるたくさんの細い血管です。
ところが、血圧が高いと、この細い血管が徐々に壊れていきます。そうなると、体の中に老廃物や余分な水分がたまりやすくなり、むくみや体のだるさが出てきます。
悪化すると「慢性腎臓病」となり、透析が必要になることもあります。腎臓は“沈黙の臓器”とも呼ばれ、症状が出にくいため、知らないうちに悪化しているケースも少なくありません。
まとめ―今からできる小さな習慣が体を守る
高血圧は、すぐに命にかかわる病気ではありませんが、「放っておくと怖い病気」の一つです。大切なのは、日々の生活の中で、無理なくできることを続けることです。
- 1. 食べすぎ注意、塩分を1日6g以下に
・味噌汁は1日1杯までに。飲み干さず、具だけを食べましょう。
・しょうゆやソースは「かける」より「つける」程度に。
・漬物は1〜2切れ程度で、食べすぎないように。
・なるべく「出汁(だし)」で味をつけ、塩味を減らす工夫を。
- 2. 水分をしっかりとる(特に朝と昼)
・高齢になると「のどの渇き」を感じにくくなります。
・一日を通して、お茶や水をこまめに飲むよう意識を。
・夜はトイレで眠れなくなるのを防ぐため、寝る2時間前以降は少なめに。
- 3. 毎朝、同じ時間に血圧を測る
・朝起きてトイレを済ませたあと、座って安静にしてから測りましょう。
・メモ帳に記録しておくと、病院での診察時にも役立ちます。
・高すぎる日が続いたら、かかりつけ医に相談を。
- 4. 無理のない運動を毎日の習慣に
・散歩は毎日15〜30分を目安に。雨の日は室内で足踏みでもOK。
・買い物のときはカートを押しながら、姿勢よく歩きましょう。
・テレビを見ながら、つま先立ちや足の曲げ伸ばしも効果的です。
- 5. ストレスをためこまない工夫を
・気持ちの緊張も血圧を上げる原因です。
・笑うこと、誰かと話すこと、趣味の時間を持つことが大切です。
・つらいときは一人で抱えず、家族や友人、医師に相談を。
- 6. 眠りの質を大切に
・寝る前はテレビやスマホは控えめに。
・ぬるめのお風呂でリラックスしてから布団へ。
・朝は決まった時間に起きて、光を浴びることが睡眠リズムを整えます。
以上のような『小さな積み重ね』が、血圧を安定させ、脳や心臓、腎臓を守ることにつながります。
「今から始めても遅くない」と信じて、一歩ずつ、自分の体をいたわる生活を始めてみましょう。