
はじめに
暑い時期になると、熱中症や脱水に気をつけている方は多いと思います。しかし、見落とされやすいのが「脳卒中の前ぶれ」です。特に夏場は、気温や水分不足の影響で血液がドロドロになりやすく、脳の血管に負担がかかります。
このとき、体が短い時間だけ異常を感じている「隠れ脳卒中」と呼ばれる状態が起きることがあります。症状は数分で治るため、「ちょっと疲れたかな」と見逃されがちですが、これは本格的な脳卒中の前兆かもしれません。
“隠れ脳卒中”とは?
正式には「一過性脳虚血発作(TIA)」と呼ばれます。これは、脳の血管が一時的に詰まり、脳への血の流れが一時的に止まってしまう状態です。
たとえば、急に手足がしびれたり、ろれつが回らなかったり、片方の目が見えづらくなったりします。しかし、多くの場合、数分〜1時間以内に症状が治まってしまいます。これが「隠れ脳卒中」と呼ばれるゆえんです。
「すぐ治ったから大丈夫」と思いがちですが、これは体からの「もうすぐ本格的な発作が来るかもしれないよ」という警告です。実際、「一過性脳虚血発作(TIA)」を起こした人のうち10人に1人以上が、その後3か月以内に本格的な脳卒中を発症すると言われています。
なぜ夏に起きやすいの?
暑い季節には、知らないうちに体の水分が減っていきます。汗をかくことで水分と塩分が失われ、血液の粘り気が増して、血のかたまり(血栓)ができやすくなります。
この血栓が脳の血管を一時的に詰まらせると、“隠れ脳卒中”が起こります。また、まぶしさや暑さで注意力が低下し、体の異変にも気づきにくくなるため、見逃されるリスクも高まります。
さらに、夏は寝苦しさで睡眠不足になりがちです。睡眠不足は自律神経を乱し、血圧の変動を大きくするため、脳の血管に余計な負担をかけます。
見逃さないために気をつけたい症状
次のような症状が数分〜1時間で治まっても、病院を受診しましょう。
- 手足のしびれ、力が入らない
- 話しにくい、言葉が出てこない
- 片目だけが見えづらい、視界が欠ける
- 歩行しにくい
- 顔の片側がゆがむ
特に血圧が高めの方、糖尿病や心臓病がある方は、些細な変化でも注意が必要です。
夏の脳卒中予防のポイント
“隠れ脳卒中”を防ぐためには、次のような生活習慣が効果的です。
- こまめな水分補給:起床時、外出前、入浴後、寝る前など、意識して水を飲みましょう。
- 塩分控えめの食事:血圧を安定させ、血管を守ります。
- 室内の温度管理:冷房を使いすぎず、暑さと寒さの差を少なくします。
- 十分な睡眠:寝る前に水分をとり、快適な温度でぐっすり休みましょう。
- 体調の記録:しびれや言葉のもつれなどがあれば、すぐに記録し、早めに病院へ行きましょう。
まとめ
夏は開放的で活動的な季節ですが、体にかかる負担も大きくなります。“隠れ脳卒中”のような小さなサインを見逃さず、早めに対処することが、健康寿命を守る大切な一歩です。
「すぐ治ったから大丈夫」ではなく、「少しでも変だと思ったら相談する」。それが、大きな発作を防ぐための賢い習慣です。