【健康コラム】日照時間が短くなる季節に注意!“冬季うつ”と睡眠の関係

はじめに

11月に入り、日が沈むのがずいぶん早くなったと感じる方も多いのではないでしょうか。東京でも、夕方5時を過ぎるとすでに空が暗く、外出や散歩を早めに切り上げる方が増える時期です。

しかし、この「日照時間の短さ」が、私たちの心や睡眠に思った以上の影響を与えていることをご存じでしょうか。
特に高齢の方は、生活リズムの変化や体内時計のずれが起きやすくなり、「冬季うつ(季節性うつ病)」や睡眠トラブルに悩むケースが増えています。

今回は、秋から冬にかけて注意したい冬季うつと睡眠の関係、そして毎日を健やかに過ごすためのケア方法を詳しくご紹介します。

 

日照時間の減少が心と体に与える影響

人の体は、太陽の光を浴びることで「体内時計」を整えています。朝の光を感じると、脳が“朝が来た”と認識し、活動モードに切り替わります。

ところが、秋から冬にかけて日照時間が短くなると、このリズムが乱れやすくなります。

また、光を浴びることで分泌される「セロトニン」という神経伝達物質は、心の安定に深く関わっています。セロトニンが不足すると気分が沈みやすくなり、無気力や不安、食欲の変化などの症状が出ることも。これがいわゆる「冬季うつ」です。

高齢者の場合、外出の機会が減ることで日光を浴びる時間がさらに短くなり、セロトニン不足が起きやすい傾向があります。その結果、夜の睡眠ホルモン「メラトニン」の分泌にも影響し、眠りが浅くなる・寝つきが悪くなる・夜中に目が覚めるといった問題が起きやすくなるのです。

 

冬季うつと睡眠の深い関係

冬季うつの特徴のひとつが、「睡眠リズムの乱れ」です。日中の光を浴びる時間が減ると、脳が“昼と夜の区別”をつけづらくなり、体が常にぼんやりした状態になります。

また、冬は体温が下がりやすく、眠りに入りにくくなることも睡眠の質を低下させる原因です。

【冬季うつによくみられる睡眠の変化】

  • 夜眠れない、寝つきが悪い
  • 朝起きられない、昼間に眠気が強い
  • 睡眠時間は長いのに疲れが取れない
  • 夜中に何度も目が覚める

これらは単なる「季節の変化」ではなく、光不足や生活リズムの乱れがもたらす身体のサインです。早めに対策をとることが、心と体の健康を守る第一歩となります。

 

光とともに暮らす:日中の工夫

冬季うつや睡眠トラブルの改善には、「朝の光を浴びること」がとても大切です。

可能であれば、午前7時〜9時の間に10〜30分ほど外に出て日光を浴びましょう。
朝の散歩や、ベランダで植物に水をやるだけでも効果があります。

曇りの日でも、外の光は屋内照明の10倍以上の明るさがあります。カーテンを開けて自然光を取り込むだけでも、体内時計のリセットに役立ちます。
また、朝食をしっかりとることもポイントです。朝に栄養を摂ることで、セロトニンの材料となる「トリプトファン(たんぱく質)」が体に吸収され、夜に安定したメラトニンの分泌が促されます。
納豆、豆腐、バナナ、卵などを朝食に取り入れてみましょう。

 

夜のリラックスタイムで眠りを整える

夜の過ごし方も、睡眠の質を大きく左右します。
特に冬は、早めに暗くなることで「もう夜だ」と感じやすく、夕方から活動量が減ってしまいがちです。

しかし、就寝3時間前までは軽く体を動かす・会話を楽しむ・明るい光を避けるなど、緩やかに夜のリズムを整える習慣をつけることが大切です。
寝る直前はスマートフォンやテレビの光を避け、柔らかい照明で心を落ち着けましょう。

また、カフェインの摂りすぎにも注意が必要です。夕方以降はコーヒーの代わりにカモミールティーやホットミルクなど、体を温める飲み物を選ぶとよいでしょう。
寝室の温度は18〜20度前後、湿度は50〜60%が理想です。寒すぎると眠りが浅くなり、乾燥は喉や肌に負担をかけます。

湯たんぽや電気毛布を使う場合は、熱くなりすぎないように調整し、快適な寝環境を保ちましょう。

 

まとめ:光と眠りで心を整える季節ケア

秋冬の睡眠トラブルや気分の落ち込みは、決して「気のせい」ではありません。
日照時間の減少が体内時計やホルモン分泌に影響を与え、心と体のリズムを乱しているのです。

朝に光を浴び、昼間はできるだけ活動的に過ごし、夜は穏やかな時間を持つ——。
このバランスを意識するだけで、冬の眠りと気分はぐっと安定します。

寒さの中にも小さな温もりを感じながら、心と体のリズムを大切に、この冬を健やかに乗り越えていきましょう。