
はじめに
「この先もずっと、自分の足で歩いて出かけたい」――そう願う方は少なくないはずです。外に出て散歩をしたり、買い物に行ったり、誰かと会ったり。歩けるということは、自由で自立した生活の象徴です。
でも年を重ねると、「最近、歩くのがつらくなった」「つまずきやすくなった」と感じることが増えてきます。けれどそれは、ただの“老化”ではありません。ちょっとした生活の工夫と習慣で、「歩ける力」は十分に保つことができます。
このコラムでは、「あと10年、自分の足で歩くために」今からできることをご紹介します。無理なく始められる小さな習慣が、未来のあなたの健康を守ってくれます。
歩ける力が弱る原因とは?〜健康寿命をのばすカギ〜
「健康寿命」という言葉を耳にしたことはありますか?これは、介護や寝たきりにならずに“元気に自立して生活できる期間”のこと。できるだけこの健康寿命を延ばすことが、心も体も満たされた毎日を送るためにとても大切です。
実は、介護が必要になるきっかけの多くは「転倒」や「骨折」です。その原因となるのが、「歩ける力」の衰えです。
歩く力が弱まる原因は、加齢そのものよりも“使わないこと”。たとえば、一日中家で座っている時間が長くなると、太ももやおしり、ふくらはぎの筋肉が使われず、どんどん弱っていきます。バランスを保つ力も落ちて、つまずきやすくなるのです。
歩行に必要な力には、以下の3つがあります。
- 筋力:特に下半身の大きな筋肉
- バランス力:体の揺れを防ぐ感覚と反応
- 神経の調整力:脳からの指令を正しく伝える働き
これらは、毎日の生活の中で少しでも動かすことで維持・改善が可能です。動かなければ衰え、動かせば保てる――とてもシンプルな原則です。
歩くことは「脳の若返り」にもつながる
「歩くのは足の運動だけ」と思っていませんか?実は歩くことで、脳も元気になります。
歩くときには、視界からの情報を処理し、バランスを保ち、次の一歩を判断しながら体を動かします。これは、前頭葉や小脳、記憶をつかさどる海馬など、脳のさまざまな部分を活性化させる動きです。
最近では、「歩く速さが遅くなると認知機能も低下する」という研究もあります。一方、週に数回のウォーキングを習慣にしている人は、認知症のリスクが下がるというデータも出ています。
また「デュアルタスク運動」といって、歩きながら数を数えたり、言葉を発したりする運動が注目されています。体と脳を同時に使うことで、認知機能の維持に大きな効果が期待できるのです。
歩くことは、足腰だけでなく脳の健康にもつながる。だからこそ、毎日の中に少しでも「歩く時間」をつくることが大切です。
毎日できる運動習慣 〜ムリなく、続けられる工夫〜
特別な運動やジムに通う必要はありません。大切なのは、「毎日、少しずつ体を動かすこと」。以下に、家の中で簡単にできるおすすめの運動をご紹介します。
- ① 朝の足踏み体操
寝起きの体を目覚めさせるために、その場で足踏みを30秒〜1分。
・背すじを伸ばして
・膝を少し高く上げて、リズミカルに足踏み
血流が良くなり、筋肉と脳が目覚めます。
- ② 椅子に座って膝の曲げ伸ばし
テレビを見ながらでもできる簡単な体操です。
・椅子に座って片脚を前に伸ばし、5秒キープ
・ゆっくり元に戻す
・左右交互に10回ずつ
太ももの筋力がアップし、歩行が安定します。
- ③ つま先立ち&片足立ち
台所や洗面所など、ちょっとしたスキマ時間に。
・つま先立ち:かかとを上げて下ろすを10回
・片足立ち:壁や机に手を添えて、片足で10秒キープ
バランス力が養われ、転倒防止につながります。
これらの運動はすべて、1日数分でOK。最も大切なのは「継続すること」です。無理なく、日常に組み込める形で取り入れていきましょう!